■ I 君と家族の日常生活の再構築を求めて |
2003 年 |
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7 月末 |
府立高校2年生(I 君)ラグビー練習中に受傷(頚椎5番・6番損傷)救急搬送でI 病院入院、急性期リハ。 |
8 月末 |
地域連携(地域リハ連絡協議会)を通じてセカンドオピニヨン・ピアカウンセラーを要請 |
10 月 |
H 病院への転院実現。回復期リハ開始。 |
11 月 |
地域保健所S さんより住宅改造訪問相談の依頼有り。保健所担当、快居の会建築士2名、I邸訪問。I 君の様子、病院でのリハ、家族の要望、予算、時間等聞き取り。
退院・復学へのタイムリミットを考慮して建替えでなく、1階部分全面 改造との方針を提案。家族全員の生活の組み立てなおしの検討が必要であり、祖母(76
歳)の為の改造も視野に入れて検討すべき事を提案し、 既設参考図面を受け取る。 図面が古い・現況と違う。
数日後、S さんを通じて正式に設計依頼を受ける。さっそく入院中(入院1か月後)のI 君を訪ねてリハの経過聞き取りを開始。その後退院まで週1回程度の経過観察を続けることとなる。 |
12 月 |
ストレッチ、寝返り、長座位、プッシュアップで前方移動、端座位から 車イス移乗等、姿勢の転換移動が困難でなかなか完成しない。本人から
排便、排尿について聞き取り。車イス操作の確認。現地調査を行い、参 考図面と現状との食い違いを確認。道路から居室までのレベル測量を実
施し、段差を確認。現況図の作成(図-1)。 改造案の検討(図- 2・3)。
月末(12 月29 日)改造計画案を提示し、年末年始に一時帰宅のI 君 をまじえて検討をお願いする(図- 4)。I 君にとって受傷以来5ヵ月
ぶりの我が家で家族との生活を楽む。家族は車イスの使えない住居(環境) で移動や外出、入浴などに相当の苦労をされたようだ。「もう大変でした。
やっぱりこの家は使えませんね〜。よくわかりました。」とお母さん。 |
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図―1 現況平面図 |
図―2 |
I 君の部屋の位置取り
と南東増築部に水回り・
玄関・階段位置の変更 |
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図―3 |
車椅子で玄関扉下を通過
する為の扉の高さは? |
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図―4 正月(一時帰宅)時の検討案 |
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2004年 |
1 月 |
正月休みあけ、FAXにて案検討についての報告を受け、代替案の検 討に入るも要望(Demands) 案の問題点説明、原案に戻る。「Demand
To Need」この間約1ヵ月改造案をもってH病院のOT、PTと検討会。I 君の使用(利用)の可能性について確認。端座位、プッシュアップ移
動が無理のため、ベンチを取りやめ跳ね上げ式スノコに変更し、長座位 でのプッシュアップ直進移動に対応(図- 5)。実施設計を開始。すでに
1ヵ月遅れ。時間がない。H病院での入院期間の延長は可能か?両親よ り打診。 |
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2 月 |
概算見積を作成し、工事範囲、仕様等の検討を行いつつ、I 君のリハ の完成度の確認、実施設計を完了。工事費の算出と工事工程表の作成。
工事期間2ヶ月は短縮できず、工事が4月末までかかる事を報告、了解 を得るもH病院退院の3月末は変わらず1ヵ月間のI 君のリハ強化入
院先の依頼を家族から保健所S さんに連絡。H病院にてOT、PTと実 施案について再確認。浴室、サニタリー回りの設計変更が必要となる。
便器の形状、跳ね上げ式スノコの位置変更等(図- 6)。平行して建築行政、 福祉行政(建築確認、浄化槽設置、用具給付制度利用等)との打合せを行う。 |
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3 月 |
施工業者2社を見積り合せの上、業者決定、工事着工へ。H病院を訪問し、 OT立会いのもとリハ室で浴室の実寸法をテープで設置し、シミュレー
ションを行う。移乗、移動が可能か、また手摺の形状等の確認及びI 君の作業台の高さ確認 (写- 1)。月末、「地域リハ連絡協議会」との連携によりI 君がH病院からS病院に転院。工事完了までの間リハの強化に入る。ピアカウンセラーのアドバイスにより自動シャワー台の設置
が追加される。 |
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車イス寄り付きの為特殊なパットを設置 |
ベッドとプラットホームにテ
ープで浴室の実寸法をとって
入浴動作のシュミレーション |
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4 月 |
転院後、S病院でI 君のリハ状況を観察。I 君使用予定の車イスを 使って便器の高さ、洗面台の位置、ハンガー(洋服かけ)の高さ等を微調整。
工事完了直前、I 君本人による現地シミュレーションを実施。実際の 使用状況の確認。洗面台、便器、手摺、段差昇降機、自室での移動・移乗、
家具の利用具合等を検証。「問題なし。」とI 君。I 君、S病院を退院。 |
5 月 |
母親の送迎で復学。3年生に。元気そう。毎週土曜日、S病院へリハ通院。
大学進学、車の免許所得に向けて一歩一歩………。 |
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