_/_/_/_/快居への取り組み 日常生活の場を再編する_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

Kさん夫婦は子供さん達が家庭を持ち、現住宅は、高齢者夫婦のみでお住まいになっている築後30年の2階建木造住宅は、ニュータウン周辺のその時代の典型的な住宅開発地に建てられた戸建て住宅です。
Kさんはパーキンソン病による歩行困難で、日常の立ち座り動作や歩行の起終時動作、段の上り下り動作などに転倒の危険と困難が伴います。外出や室内移動において、車椅子利用の場合と手すりの利用した場合を想定した改造を行いました。






改善のポイント(1)・・・

--家庭生活の見直しから〜夫婦のみの生活における
  自立的行動のために3つの課題に取り組む

・Kさんの日常生活の中心の場(書斎兼寝室)を1階に移す
 2階は日当たりも風通しも良いのですが、日常の階段の昇り降り移動の
 機会をなくしていくことと、寝室、浴室、便所を近接させるため、1階の
 和室の1つを増床し、書斎兼寝室としました。



・水まわり(浴室、便所、洗面)をワンルームスペースとし、広さを確保する


・車椅子利用での外出動線を確保する
 
 屋外の駐車場から庭先を通り、
 現住宅の玄関とは別のエントランスを設け、
 敷地と床の高低差に対し、庭に
 段差昇降機を設置する


改善ポイント(2)・・・

--身体のことから〜可動動作をフル移動できる工夫をする

  ・Kさんが、手すりなどに工夫があれば、ご自身で出来ると思われていることを
   実現するためさまざまな形態の手すりの工夫をしました



改善ポイント(3)・・・

--介護のこと〜現時点の介護だけでなく、将来の展開を見込んでおく

・現時点では手すりを駆使し、介護にたよらず、自分で出来る限りの行為を、
 ご自身でこなす工夫をしてますが、将来において介護を必要とする状況を予測し、
 身体の移動負担の軽減のため、天井走行リフトを備えをしています



改善ポイント(4)・・・

--既存の家の扱い〜現住宅で生活を送りながら改造工事を進める

工事中は移転したり、子供達の家で仮住まいというケースも
多いのですが、出来れば住みながら、ということが気持ちの
上でも負担が少ないと思います。
そのため、浴室、便所の行程をスライドさせ、
工事を進める手間をかけることにしました


改善ポイント(5)・・・

--お金のこと--

介護保険制度下での
住宅改造助成を
フル活用いたしました


*支給金→介護保険居宅介護住宅改修費支給金(20万円の9割)
*助成金→T市在宅高齢者住宅改造助成金(100万円の6割)


改善ポイント(6)・・・

  --快適に--

明るさと風通しを
そして、ちょっと木の香りを・・




_/_/__/_/_/_/快居の会の建築士さんはこう考える---段差の解消__/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
馬場健一建築研究所  馬場健一(一級建築士)

【段差の解消--スロープと段差昇降機】

 高齢者、障害者の在宅支援のための住居改善活動において、外出手段をどう確保するかということは、対象者の生活圏を拡大すると言う意味で重要です。外出が容易に出来ることで、仕事、趣味、買い物、各施設の利用など、対象者の生活の変化は画期的です。
 日本の住宅の特徴として高床であること、また郊外では、敷地自体も、ひな壇造成という方法が一般的で、道路と宅地の地盤面にも段差があります。そこで、外出のために、こうした段差をどう越えるのかが重要な課題となります。
 緩い階段や屋外型の階段昇降機が使える場合もありますが、車椅子使用の対象者についてまず考えられる手段は、スロープか段差昇降機です。スロープを使った事例(*)が多く紹介されてますが、ほとんどが介護者の存在が前提のようです。スロープは対象者や介護者の能力を考えると、非常に多くの距離、面積を必要とします。1/12〜1/20の勾配、一気に上下できる距離はかぎられます。安全のために休憩できる平らな部分(踊り場)が必要になります。狭い敷地や段差の大きい敷地では、現実的ではありません。たとえスロープが設置できたとしても対象者が一人で安全にスロープが使える例は非常に少ないように思われます。(強靭な腕力、又は電動アシストが欠かせません)

 私たちは、火災など緊急時の避難も含め、対象者が最大限の自立的生活をめざすことが重要であると考えています。そのためにはスロープよりも、対象者が一人で安全に段差を移動できる可能性が高い、段差昇降機(テーブルリフト)は、非常に有効な機器だと考えています。
 バリアフリーサッシの普及や、フラップの工夫、リモコンなど操作手段も多様化が進んで、段差昇降機は、いよいよ使いやすくなっています。メーカーによっては段差1.6m程度までは規格品で対応しております。(それ以上の段差の場合、2.0m前後までの特注も考えられますが、高価になることもあり、2階への移動も含めてホームエレベーターを採用することが多いようです。)
 公共交通手段のバリアフリー化、いろんなタイプの障害者用自動車の普及、送迎サービスなどの充実、デイサービスなどの施設の充実、ハートビル法や福祉のまちづくり条例による各種建物のバリアフリー化などと相まって、外出手段の確保は住居改善の活動の中で、生活のクオリティを高めるために、いよいよ楽しみな領域となってきています。

(*)関東ではスロープに固執し、段差昇降機の使用が少ないように思われ、段差昇降機を積極的に利用している私たちからすると、大変不思議でした。最近になって、その理由が少し判ったように思います。東京都の場合、区で独自に追加助成しているところ以外、段差昇降機は住宅改造助成の対象になっていないようです。関東圏や他の地域でもこれに倣っているところが多いのではないでしょうか。全国的には部位別に費用を限定していない、大阪府のような助成方法のほうが珍しいのかも知れません。自立支援という視点からすると、非常に有効な手段と考えられる段差昇降機が、制度上助成対象にならないというのは、納得がいきません。



〜〜快居の会メンバーの紹介〜〜

松村 優 さん

最近考えていることがあります。私たちの活動では、住宅改善の意義や方法論の議論が多々ありますが、それとは別に、この活動は、お年寄りの立場で言うと「住宅で困っている人に、いつでも、すぐに親身になって、工夫と知恵を提供してあげる。」ことなのだ、ということです。かつては共同体が相互扶助的に機能し、工夫と知恵が気軽に集まり、解決していたのではないか。そういう環境を喪失している今日、地域に気軽なシステムを実現するとしたらどんな姿なのか。現在、NPOに取り組んでいますが、わかりやすく広がりをもって、誰にでも身近な物にする為にどうしていくか、ということを考えています。もう一つあります。それは個々のケースから得られるプランニングに共通のヒントとなる事柄です。バリアフリーとはいうこととちょっと異なり、つまり、将来起こりうる生活と身体上の変化を見通すことは、なかなか難しいことから、必要になった時に用意に改造しえてなお、見苦しくないための当初の造りがどんなものかを考えたいと思っています。宜しくおつき合いお願い致します。


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