■ 大熊由紀子先生の話を聞いて                            佐藤和子   

 当日参加した私の友人(65歳、一人暮らし、共済年金受給者)は、「この国では老いたくないなぁ」と、言いました。
 それほど、今の日本で人生の最後を迎える時の辛さがよく伝わる講演でした。
  「おぼけになったら」待っているのは、檻付き個室や拘束。評判の高いお金持ち用の施設が出している、ペットのえさのような細切れどろどろの食事。誰かの世話にならないと生きていけなくなった時の、あまりにも人権を無視した現実の場面の連続に、参加者全員がドンドン引き込まれていきました。それにひきかえ、デンマークの痴呆高齢者が、きちんとした身なりで思い出の品に囲まれて、日常生活をおくっている様子。人生の最後に、誰もがそういう支え方をしてもらうために、お金を使って当然という、国民の姿勢。あまりにもこの違いは大きすぎるじゃない!誰でも「デンマークに生まれたかったなあ」と思いますよね。しかし、スウェーデンでも、働けなくなった年寄りを皆で崖から突き落としていた時代もあったとか。
  ローマは一日にしてならず。多くの人達の様々な分野での活動の積み重ねが、今の手厚い福祉制度に実った事を、思い知らされます。
  この講演を聞いた一人一人が、思いを新たにして、自分の持ち場で見つかる人権無視の現実を変えて行かなくては。

また、介護される人、介護する人どちらの人権も大事にされなくてはなりません。家庭介護の泥沼で両方の人権が損なわれている現実もよくみかけられますよね。由紀子さんは今回の講演で、「当たり前の人権感覚を原点に、初心を忘れずに」と、我々の活動に対して激励をされたのではないでしょうか。最近の「福医建」では、行政機関等とのタイアップ事業が増えてきていますが、様々な矛盾を抱えながら行われている行政の補完だけにならぬように、シャープな原点としての人権感覚を失わないように気を付けなくては、と身を引き締める思いでした。
  今回の講演をきっかけに、より積極的に我々の活動に参加していこうと思われた方、研究会への発言や情報発信をして下さい。お待ちしています。

講師紹介(著書より抜粋)
大熊由紀子
大阪大学大学院教授
東京大学教養学科、科学史・科学哲学分科卒業。
朝日新聞社会部、科学部記者を経て、 朝日新聞
・女性初の論説委員に。主に医療、福祉、科学、
技術分野の社説を担当。2001年より現職

主な著書
「寝たきり老人」のいる国いない国
       新の豊かさへの挑戦(ぶどう社)
福祉が変わる医療が変わる
  日本を変えようとした70の社説+α(ぶどう社)
など


  

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