特定非営利活動法人 福祉医療建築の連携による住居改善研究会 住居改善実践事業部   No.13 2006. 6.10


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13号記事

■ 大東市委託「交通バリアフリー基本構想事業計
   画」の報告
■ 快居への取り組み〜 IN 君(頚椎損傷)の家の改造
■ シリーズ住宅改修に利用できる公的制度につい
   て(Part2)

■ 大東市委託「交通バリアフリー基本構想事業計画」の報告             馬場 昌子     
 ハートビル法制定に引き続き、交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者などの公共交通機関を利用した移動の円滑化に関する法律) が制定され、各地の駅舎や駅舎と特定建築物を結ぶ道路( 特定経路) のバリアフリー化が推し進められ始めています。ご自分の暮らす自治体の発行する広報パンフレットなどによって、 その内容を知ることができます。
 第1 条にその目的がうたわれており、「高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性が増大していることにかんがみ、公共交通機関の旅客施設及び車両などの構造及び設備を改 善するための措置、旅客施設を中心とした一定の地区における道路、駅前広場、通路その他の整備を推進するための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利 便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」となっています。この法律が ハートビル法と違うところは、道路という公共物を対象としており、バリアフリー化のための国の支援メ ニューがいろいろあることです。したがって、自治体の取り組み力で整備状況に差が生じるものと思われます。これからが楽しみです。
 昨年度、すでに基本構想を策定している大東市から、道路改善の考え方についての提案が求められました。 そこで、情報収集や勉強会を経て、当事者、市役所関係部署、リハビリテーション課職員、関西大学学生、 当NPOふくいけん研究会建築技術者で、対象道路の調査を行いました。
 結果はというと、交通バリアフリー法に定められた基準を満たす項目はほとんどありませんでした。これは大東市に限ったことではありません。日ごろ使っている道路のほとんどが、車椅子を使っている人や目の 不自由な人などが安心して移動できるようにはなっていません。まずは「特定経路」からバリアフリー化が 進められるという状況なのです。
 調査時に道路の物理的状況ばかりでなく、放置自転車やはみ出し看板などそこを利用する人々の問題も大きくクローズアップされました。福祉のまちづくり調査のときにも人々の意識が問題となりましたが、この国は本当にハード・ソフトの両面で福祉後進国であることを痛感させられます。
 報告書では、これら実態調査の結果、特定経路基準に沿った改修の手法を総論的に示し、ついで、個別の 道路ごとの考え方を示しました。特に、視覚障害者誘導ブロックについては、無いところが多いこと、あっ ても、敷設基準があいまいでさまざまな形状が出現したこともあり、どういう配置がよいのかについての検証実験をすることになりました。その結果、(1) 歩道幅員が2 メートル以上ある場合は、視覚障害者誘導ブロッ クを敷地境界から1.05 m離して設置すること( 中央に設置すると車椅子が誘導ブロック上を通るか、また がなければならないが、1.05 mの場合は90cm の車椅子通行幅を確保できる)。(2) 誘導ブロックの使い方については、実験に参加して下さった人によって違いがあることから、有効な配置を決めていく上で、当事者 とともに利用の仕方の標準や配置の決まりを作り出していくことが必要であること。を確認しました。
 道路がバリアフリー化されることと同時に、歩いて楽しい道、我が家のように親しみの持てる道になってはじめて、暮らしやすいまちになるはずです。調査に参加して下さった視覚障害の方の「道路はまちの居間」という意味深長な発言が、痛く響きました。


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